湿潤療法

Moist healing

湿潤療法とは?

湿潤療法とは?

湿潤(しつじゅん)療法とは、傷を乾かさずに治すやり方のことです。消毒液もガーゼも使いません。水で傷をきれいに洗った後、消毒はせず、そのまま傷を被覆材(ひふくざい:傷をピッタリと覆うシートやフィルム)で覆います。傷を消毒し乾いたガーゼで覆う従来のやり方よりも速くきれいに傷が治り、痛みも軽いのが特徴です。

以前は、傷は消毒薬で消毒し乾燥させるのが良いとされていました。ところが消毒薬は、細菌を殺すと同時に傷を治す細胞や物質、さらに健康な皮膚なども傷めてしまうことがわかりました。また、傷から出てくるジュクジュクした滲出液(しんしゅつえき)には、傷を速く治すための物質がたくさん含まれています。

どのような傷に適している?

どのような傷に適している?

湿潤療法は、日常生活で起こるほとんどの傷に対応可能です。特に靴ずれや軽い火傷、刃物でスパッと切った浅い傷などのような、傷口から滲出液が出てくる傷に適しています。通常の乾いたガーゼで覆う方法では、傷から出てきた膿や滲出液がガーゼにくっついて、剥がす時にものすごく痛みます。

逆に、湿潤療法が向いていない傷として、動物にかまれた・虫に刺された傷、深い傷、傷口がギザギザ担っている傷、洗っても砂利などの異物が取れない傷、押さえても血が止まらない傷が挙げられます。このような場合は病院を受診しましょう。

また、糖尿病・ステロイド内服中などで傷が治りにくい持病をお持ちの方、発熱している方の場合は、自己判断で湿潤療法を行うと、かえって傷が悪くなる可能性があります。自己判断せずに病院を受診し、湿潤療法を行って良いか指示を受けた方が良いでしょう。

湿潤療法のメリット

湿潤療法のメリット

湿潤療法のメリットとして、まずは痛みが少ないことがあげられます。傷に消毒液を使うとしみて、ものすごく痛いです。また、ガーゼを当てるとせっかく出てきた滲出液が乾いてしまい、傷とガーゼが密着してしまいます。このガーゼを剥がす時も痛いです。

また、従来の方法よりも傷の治りが明らかに速いこともメリットの一つです。カサブタもできませんので、傷痕も比較的残りにくいとされています。

さらに、いくつかの注意点を守ればご家庭でも簡単に実行できることがあります。以下に、ご家庭で湿潤療法を行うときの正しいやり方と注意点をまとめておきましたので、参考にしてみてください。

ご家庭での湿潤療法のやりかた

準備していただくものは、ハイドロコロイド素材を使用した保護パッド(被覆材)です。ドラッグストアなどで販売されています。保護パッドが手に入らない場合は食品用のラップとラップを留めるテープ、白色ワセリンで代用します。

まずは血を止めます。きれいなハンカチやタオル、ガーゼなどで血が止まるまで傷を押さえましょう。傷を水道水できれいに洗います。傷やその周りにドロや砂利、血液などの汚れが残らないよう、できれば水を流したまま念入りに洗います。石鹸やボディーソープなど、界面活性剤の含まれた洗浄剤を使うと逆効果となりますのでご注意ください。

きれいに洗った後は、清潔なタオルなどで水気を拭き取ります。傷が乾かないように保護パッドで覆います。ラップで代用する場合には、ラップに白色ワセリンを塗って傷を覆い、周りをテープなどで留めましょう。最初は特に滲出液が出ますので、保護パッドは少し大きめの方が途中で剥がれにくいです。

保護パッドは、最低でも1日1回剥がして交換します。剥がした後は、毎回傷を水できれいに洗って貼り直します。汗をかいたときなどはその都度交換しましょう。傷が腫れてくる、傷の周りが赤くなるなどの兆候が見られたら、細菌感染を起こした可能性があります。湿潤療法を中止し、早めに病院を受診しましょう。

湿潤療法が効いている場合は、1週間程度で傷がふさがることが大半です。1週間経ってもまだ傷がジクジクしてふさがる感じが見られない、またしびれや痛みがある場合は、病院で一度診察を受けることをおすすめします。